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20804号室へ

第八十一話

「それにしても彼、なぜ一言もしゃべらないんだ?」
「巨人様がお戻りになられたら、お聞きしてみよう。」
 松永の回りでは、太田に連れてこられた村人たちが話していた。松永は、
(それにしてもどうすれば良いんだ……何かすれば村の連中の目がある、一人で
調べに行こうにも、待つように言う訳にも行かないし……)
 そのときである、

-ざざー-

 突然テレビの映像が乱れ、「しばらくお待ちください」の文字が出た。宝田教授の
仲間のヘリが、部長たちにつかまった瞬間だった。


「すみませーん、なんでも言いますから助けてくだサーい。」
 部長たちにつかまったヘリのパイロットが言う。そのときである。突然辺りが
明るくなった。石本が、
「なんだろう。」
 すると突然巨大なUFOが上空に現れた。飯田が、
「宇宙人のやつ、自らお出ましか……。」
「なんのためにこんな事するんだよ。」
 石本がUFOに向かって言う。
「ちょっと君たち、待ち給え。落ち着いて……。」
 UFOからの声が聞こえてきた。飯田も、
「何をたくらんでいるのか知らないが、お前たちの思い通りにはならないぞ。」
 するとUFOからの声は、
「私たちは巨人型兵器を製造して売りさばき、資金源にしている悪のグループ
 “メンダルワーイ”を追っている宇宙パトロール隊だ。」
「宇宙パトロールとか言って、また僕たちをだます気だな。」
 石本が言う。すると部長が、
「せっかく向こうから接触してきたんだ。話だけでも聞こう。」


 一方、宝田教授は、
「くそ、宇宙パトロールに気づかれたか、こうなったら仕方がない。ボスに連絡
 してあれを……。」 


 部長がUFOに問いかけた。
「それで、その巨人型兵器って何なんだ?」
するとUFOが説明をしはじめた。
「巨人型兵器というのは、メンダルワーイが開発した薬で巨大化した人間達を
兵器として使えるように育成し洗脳された巨人のことだ。」
石本が部長の持ってるヘリを指差して言った。
「こいつもメンダルワーイなのかな・・・?」
部長が怖い顔でヘリのパイロットに言った。
「お前、メンダルワーイってやつらの一員なのか?」
「えっ・・・えーと・・その・・・」
「潰されたいのか?」
「いっ、言います! 私はメンダルワーイの一員です。 隊長の命令でやった
 だけなんです。」
「隊長の命令?」
「そうです。地球侵略部隊の隊長、君たちが宝田教授と呼んでる方です。」
3人は驚いて顔を見合わせた。
「宝田教授が・・・? そんな・・・」
飯田がしかめた顔で言った。
「確かに、あんなにすごい薬を今の地球人が作れるわけない・・・か。」
すると部長が他の部員達のことを思い出した。
「まずい、俺達以外の部員が宝田教授と行動してるんだ。」
それを聞いたヘリのパイロットが、
「あっ! その人達なら今頃、巨人洗脳室に入れられてますよ。」
「巨人洗脳室? 何だそれは?」
「私達の扱いやすい巨人にするために、洗脳する部屋です。 彼等はそこで
 暮らしてますよ。」

ミシミシ・・・・グシャッ

部長は怒りで手に力が入りヘリを握り潰した。
ヘリのパイロットは間一髪のところでヘリから脱出して、部長の手にしがみついている。
「ちょっ、ちょっとー。 ちゃんと正直に話してるんですから、潰さないで下さいよー。」
部長がパイロットに言った。
「俺達をそこに案内しろ。」
「は・・はい。」


宝田教授はボスに連絡していた。
「ボス、緊急事態です。 宇宙パトロールに見つかりました。 至急ダイちゃんを
 送ってください。」
するとボスは、
「なにっ! そこまでマズイことになっているのか。 だが、ダイちゃんは今お昼寝
 している。もう少し待てんか?」
「ボス、もう時間がありません。 このままじゃボスの方にもパトロールが・・」
「むー・・仕方ない・・・」
ボスはちょっと引きつった表情で息子の部屋に向かった。
「ダイちゃーん、起きてるー? ちょっとお父さんの仕事手伝ってもらいたいんだけど・・・」
ボスは部屋の外から大声で言ったが、返事がない。
そしてもう一度
「ダイちゃーん。」
すると中から返事が返ってきた。
「昼寝の邪魔したら、父ちゃんでも食っちまうって言っただろ!」
ダイちゃんとはボスの息子で見た目はただの肥満少年なのだが、
薬の研究室でイタズラをして大量の実験中の薬を浴びてしまい
偶然に体の大きさを自由に変えられる能力を身につけたのだ。
ダイちゃんがその気になれば、地球を指で摘めるぐらい巨大化することができる。
「ねー、ダイちゃん。今回だけだから。」
「わかったよ。 そのかわり、あとで報酬たっぷりもらうからな。」
「もちろんだよ。かわいい息子よ。」 

第八十二話

「俺たち以外にも宇宙パトロールだっているんだぞ、嘘教えたり、途中で
 逃げたりするなよ!!」
 部長が更に言う。ヘリのパイロットは、
「わかりました。こちらへ……。」


「何にもないじゃないか、本当にここなのか。」
 ヘリがなくなったので部長に乗せられたヘリのパイロットは、海岸の岩場に
案内した。
「いえ、ここに転送装置があるんです。追っ手が来たときのために直接目的地で
 はなく、少し離れた場所に転送されるようにプログラムされているんです。」
「君たちはここで待ってなさい。私たちがちゃんと転送装置を作動させるか、
 見張っておく。」
 宇宙パトロールのUFOが着陸し、隊員たちが降りて来た。ヘリのパイロットは
宇宙パトロール隊員たちと岩場にあった洞窟の中に入っていた。それを見下ろして
いた石本は、
「よかった。宇宙パトロールとか言っている宇宙人たちも本物みたいだし、これで
 もう安心だね。」
 すると飯田は、
「いや、何かいやな予感がする……。」
 部長も、
「事件が解決するまで安心するな。」
 石本は、
「そんな〜、もう戦うなんてやだよ〜。」
 そのとき、辺りが光に包まれ、回りの景色が一変した。


「なんだここは?」
 部長が言った。そこは先ほどまでは海岸にいたのに砂漠のような場所に
部長たちはいた。飯田が空を見上げると、月らしき物が2つ見えている。
その月が何かで覆い隠されようとしている。
「月が2つなんて、ここは地球ではないのか?」
 飯田が言うと、石本が、
「あ、何だアレー、雲じゃない。滅茶苦茶でかい宇宙船みたい。いくら僕たちでも
 アンなのと戦えないよ。」 

第八十三話

 するとヘリのパイロットが、
「あの中に洗脳ルームがあります。転送装置は宇宙船の立ち寄るこの惑星を
 選んだようです。」
 それを聞いた石本が、
「どうしよ〜、きっと凄い攻撃でやられちゃう。」
 すると宇宙パトロールの一人が、
「いや、あの超巨大宇宙船はスペースコロニーで宇宙の大規模災害や戦争の難民を
 大量に受け入れている。地球からも以前から戦争などで住む場所を失った人間を
 受け入れていたから、怪しまれなかったんだ。メンダルワーイめ、こんなところに
 アジトを作っていたのか。」
 すると部長は、
「だとすると部員たちはもちろん、巨人騒ぎで避難した人たちもあの中に
 いるかもしれない。」
 そのとき、
「みんな、よくここまで来たな。だがこれまでだ。」
 何時の間にか宝田教授が部長たちの足元に立っていた。石本が、
「なんてひどいことをしたんだ。踏み潰してやる。」
 すると宝田教授は、
「そんな事をしても良いのかな。こっちはボスが究極の助っ人をよこした。
 お前たちはもう終りだ。」
 すると宇宙パトロールのリーダーらしき一人が、
「そんな悪あがきをしても無駄だ。お前を逮捕する。」
「多分無理だと思うよ。みんな僕が踏み潰しちゃうからね。」
 宝田教授の後ろから、一人の少年が出てきた。もちろんその少年こそボスが
よこしたダイちゃんだった。ダイちゃんはテレビのヒーローの変身ポーズのような
動きをしながら、
「巨大変身、タぁーっ!」

-どっかーん-

 ダイちゃんは巨大化して、部長たちと同じサイズになった。そのとき、
宇宙パトロールのUFOを叩き落したのだった。ダイちゃんは、
「まず、宇宙パトロールのおじさんたちを踏み潰しちゃおうかな。」 

第八十四話

叩き落とされたUFOから乗組員達が一気に脱出し、外に出てきた。
それを見たダイちゃんが、
「うお、いっぱい出てきた。 踏み潰しごたえありそう。」
ダイちゃんが足を上げた、そのとき。

「やめろっ!!」

部長が叫んだ。
ダイちゃんはその声に一瞬驚き、よろけてその場にしりもちをついた。

ズッシーン・・・

幸い宇宙パトロール達は、ギリギリ踏まれずにすんだ。
ダイちゃんは怒った顔で部長達を睨んだ。
石本が言った。
「ぶちょう・・・」
すると部長が、
「石本、何ビビってんだ。 相手はガキだろ。 大きさが同じでも俺達は相撲で
 鍛えてるんだ、負けるわけない。」
飯田も続けて言った。
「そうだ、さっきの怪物に比べたらこっちのが全然マシだろ。」
部長がダイちゃんに言った。
「今だったら許してやるから、家に帰りな。」
するとダイちゃんが笑い出した。
「ははは・・・お前達さー、僕に偉そうに言える立場だと思ってるの?」
「どういうことだっ?」
ダイちゃんが空を指差して言った。
「あそこに月があるだろ? あれでキャッチボールしない?」
「・・・?」
3人はダイちゃんの言ってる意味がまったくわからない。
するとダイちゃんは、
「じゃあ僕から投げるねー」
と言って消えてしまった。
「あれ、どこ行ったんだあいつ。」
3人はダイちゃんを探したが見つからない。
石本がふと上を見た。
「わああーー、・・・・あれ・・」
部長と飯田も石本が見ている方を見た。
「そんな・・・」
ダイちゃんが月の横でこちらに向かってピースしていた。
そして月を野球のボールのように掴むと、部長達のいる惑星の方に投げた。
月が近づいてくるにつれて、その巨大さがわかる。
月はギリギリ惑星には当たらず、宇宙の彼方に飛んで行った。
3人は、あまりのできごとに言葉もでなかった。
気付いたときにはダイちゃんがもとに戻って惑星に帰ってきていた。
ダイちゃんが手をパンパン払いながら言った。
「あの月の大きさはねー、だいたいこの惑星の半分ぐらいなんだよ。
 もし当たってたらこの星粉々になってたよ。」
3人は口をポカーンと開けて、ダイちゃんの方を見ている。
ダイちゃんは続けて言った。
「そう言えば、お前達も一応巨人兵器候補なんだよね。 僕と戦うなんて無駄なことやめて
おとなしく僕達のところに来れば? パトロールのチビ達を踏み潰したら許してやるから。」 

第八十五話

 ほぼ同じ頃、部長たちのいる惑星の他に、ダイちゃんの投げた月から難を
逃れたもの、そこを通りかかった超巨大宇宙船だった。宇宙船はそこからから
かなりはなれた宇宙空間へとワープをしていた。その宇宙船のブリッジでは、
「ぎりぎりセーフだったな。それにしてもあの巨人は……。」
「情報によるとメンダールワーイのボスの息子、ダイちゃんらしい……。」
「ちょっと待て、なんでそんなやっかいなやつが……。下手すればこの船も
 宇宙の藻屑になっているぞ。」
「知らないのか?この船の居住区にメンダールワーイのアジトがあるらしいって
 こと……。宇宙パトロールが潜入捜査をしている。こちらにも詳しい捜査情報が
提供されるはずなんだが……。」


「おい、早くここを出るんだ。」
 部屋の鍵を開け、入って来たのはここへ案内した多田だった。
「あの……鍵……。それよりどうしたんですか?」
 何度か部屋を出ようとしたが、どうしても鍵が開けられず、仕方なく台所で
食べ物を探していた太田の前に多田は現れた。多田は次々と部屋の鍵を開け、
部員たちを集めた。
「いったいどうしたんですか?」
 川田が多田に聞く。多田は、
「話しはここを出てからだ。」
 部員たちは訳のわからないまま多田に連れられて建物の外へと出た。多田は、
「君たちはメンダールワーイと言う組織に利用されていた。君田たちは兵器として
 洗脳されるところだった。私は宇宙パトロールからの命令で潜入捜査をして
 いたんだ。君たちが知っている宝田教授もそのメンバーだった。」
 部員たちは、
「なんだってー。」
「まじかよー。」
「……ってどうすれば……。」
 多田は、
「仲間が君たちを迎えに来るはずだったが、急に連絡が取れなくなった。
 だが私たちはもうやつらのアジトの外に出た。追っ手も来ないようだし、
 とりあえず今のところは安心していい。」

 多田が連絡を取るべき宇宙パトロールのUFOは先ほどダイちゃんに叩き
落されていたのだ。また、この騒ぎで忘れ去られた男がいた。部屋にミニチュア村の
こびとたちと置いてきぼりにされた松永だった。こびとたちは、
「巨人様は出ていかれたきり、お戻りになられない。どうなされたのだろう。」
 そのとき、松永たちのいる部屋に誰かが入ってきた。 

第八十六話

「くそー、宇宙パトロールのやつが潜入していたとは・・・」
部屋に入ってきたのは、ダイちゃんを部長達のところに送り届けたあと
帰ってきた宝田教授だった。
宝田教授が松永のいるベッドに気付いた。
「いや、まだ手はある。 あいつらいいもの置いて行ってくれたな。」
教授は松永を見るため、顔を近付けた。
「少し縮んだみたいだが、よくがんばってるな。 もうとっくに肉眼では
 見えないくらい縮んでると思っていたよ。」
そういうとポケットから小さな薬を取り出した。
「この薬を飲むんだ。 これを飲めば声を出しても縮まなくなる。 これ以上縮まれたら
 人質としての価値がなくなるからなー。」
松永は自分の前に置かれた薬を疑っていたが、声が出したくて仕方なかったため
薬を飲むことにした。
松永のまわりにいたこびと達は状況がまったくわからず、ただ薬を飲む松永を見ていた。
薬をのみ終えた松永に宝田教授が言った。
「もう喋ってもいいぞ。 お前はみんなに忘れられたんだ。」
松永は縮んでしまわないか少し心配だったが、思いきって言った。
「何をしようとしてるんだ! 何か企んでるだろう?」
教授が言った。
「君はまだ状況がわかってないだろうから、全部説明してあげよう。
我々はあの薬を使って巨人兵器をつくっている組織なんだ。
優秀な巨人を育てて裏で売っているってわけだ。 だが、高く売るにはそれなりに条件があってね、
怪我をしにくいとか、見た目が強そうとかいろいろあるんだが
君たち相撲部はその条件にぴったりだったんだ。
途中で邪魔が入ったせいで計画は順調ではないが、君のおかげでなんとかなりそうだよ。」
すると松永が、
「俺達は最初から利用されてたってことか?」
「そのとおりだ。 まぁ、君は巨人には向いてないみたいだが。」
教授は時計を見て立ち上がった。
「とにかく君は人質として私と来てもらう。」
教授は松永を掴むとポケットに入れた。


そして部長達は・・・
「早く踏み潰しちゃえよー。 それともまだ僕と戦う気?」
部長達はどうしたらいいのか全然思いつかない。
すると宇宙パトロールのリーダーらしい人が部長の足元によってきた。
部長はかがんでその人の話が聞けるようにした。
「私達を踏んでください。 大丈夫です、私達は特殊なスーツを着ていますから。
ゆっくり踏んでくれれば耐えられます。」
「そう言われてもなー・・・」
部長には自分の体重に耐えられるとは、とても思えなかった。
すると石本がなぜか目を光らせて言った。
「僕やりたい、踏んでもいいんでしょ?」
部長が心配そうにパトロールの人に聞いた。
「ほんとに大丈夫なんですね?」
「ええ、ゆっくりなら耐えられますよ。」
石本はうれしそうに宇宙パトロール達の前に立った。
「それじゃ、踏み潰しまーす。」
石本は勢いよく足を振り上げた。
それを見た宇宙パトロール達が一斉に石本の前から逃げ出した。

ズッシーーーン!!!

石本が踏み下ろした場所は、地面が陥没して小さなクレーターのようになっていた。
石本が部長に言った。
「この人達、踏んでいいって言ったくせに逃げたよ。」
「あたりまえだっ!! お前マジで潰す気だっただろ!」
部長達の行動をずっと見ていたダイちゃんが言った。
「お前達つまんない。 テレビはじまるから僕帰る。」
ダイちゃんは持っていた機械を操作して消えてしまった。


「父ちゃん、ただいまー」
ダイちゃんはボスのところに帰ってきていた。
「おお、ダイちゃん。 帰ってきたってことは、みんな片付けてくれたんだね。」
ダイちゃんは首を振った。
「違うよ、つまんないから帰ってきただけ。」
「そんなー。」
「一応行ったんだから報酬はもらうから、あとで部屋にもってきてよね。」
ダイちゃんは自分の部屋に入っていった。
ボスは、
「この状況をなんとかできるのはダイちゃんしかいない。 こうなったら
 ダイちゃんを怒らしてでも・・・」 

第八十七話

「あいつも帰っていったし、やれやれだな。」
 部長たちが話していると再び上空に先ほどの超巨大宇宙船が現れた。
そこからいくつかの宇宙船、今回はUFO型ではなくスペースシャトルに
似ている形だ。その中の一機が部長たちの前に着陸した。そこから降りてきた
中には多田と相撲部員たちがいた。部長は、
「あ、お前らどうしてここに?宝田教授の運転するバスで避難したはずじゃ……。」
 すると多田が、
「そのバスはまだ見つかっていませんが、捜査が進めば証拠として押収
 できるでしょう。おそらくバスごと転送装置で移動したか、宇宙船として
 改造してあったと思います。」
 その後にシャトルからもう一人の誰か降りてきた。それを見た石本が、
「あれ?また誰か降りて来たよ。」
「はじめまして。私はこのシャトルの機長のウェイトと言います。君たちの
 事は聞いてます。でももとの大きさに戻る前に私たちの仕事を手伝って
 いただけませんか?」
「どういうことだ?」
 飯田が聞くとウェイトは、
「この星で大水害が発生したので、住民を救助に来たんですが、ダイちゃんが
 投げた月の重力の影響で異常高潮が発生して被害が拡大したようです。
 そこであなたたちに住民の避難を手伝ってほしいのです。」
「そうだ、俺たちも何か手伝える事はないですか?」
 川田が言う。すると部員たちは、
「そうだな。」
「部長たちが戦っていとたきのんびり温泉に入っていたしナー。」
 するとウェイトは、
「では皆さんには避難した住民たちに炊き出しの手伝いをお願いします。」


 部長たちはウェイトの案内でやってきた場所は町全体がほぼ水没し、
高い建物が水面上に出ているだけだ。飯田が、
「なんがすごいことになっているナー。」
 部長と飯田はビルの屋上に集まっているこびとたちを見つけた。飯田と部長は
建物ごとシャトルが着陸できそうな場所へと運び始めた。それを見た石本が、
「僕も手伝うよ。」
 すると部長は、
「今回はそこで見てろ、お前何度もこびとたちを踏み潰そうとしているからな。」


 一方、警備のスキを付いてアジトのある超巨大宇宙船から脱出し、ボスのところへ
到着していた宝田教授は、
「それじゃダイちゃんは結局そのまま帰ってきたんですか?」
「ああ、いや、調子悪いみたいでな……。」
「そうですか……でもボス、心配ありませんよ。まだ手はあります。」
 そう言って連れかえった松永を見せた。するとボスは、
「そうか……。そうだいい事を思いついたぞ……。」 

第八十八話

みんなが救助活動をしているのに、自分だけなにもできない石本は、
「もう踏みつぶそうとしませんから、僕も手伝わせてくださいよー。」
部長は少し考えて石本に言った。
「それじゃあ、俺達が運んできたビルの屋上にいる人たちを地面に下ろしてあげるんだ。
 絶対つぶすんじゃないぞっ!」
「わかりましたー」
部長は運んできたビルを石本の前に置いた。
「それじゃこびとさん達、僕が下におろしてあげるからねー。」
石本はビルの屋上に手の平を出した。
すると屋上に避難していた人達は石本の手に乗った。
石本はゆっくりと手をビルから離して行く。
「小さくてかわいいなー。 今手を握ったらみんな潰れちゃうんだろうなー。」
石本は独り言のつもりで言ったのだが、こびと達に聞こえてないわけがない。
手の上に乗っているこびと達が騒ぎだした。
「たすけてー、つぶされるー。 つぶさないでくれー。」
そこにもう一つビルを運んできた部長が言った。
「いーしーもーとー、何やってんだ!! もう手伝わなくていいから向こう行ってろ。」
「は〜い」
石本はこびとを地面に下ろすと他の部員達のところに行った。
他の部員達はシャトルの近くで炊き出しの手伝いをしていた。
太田が石本に気付いて言った。
「石本、俺達のことも踏み潰したいと思ってるんじゃないだろうなー?」
「潰したいけど、部長に怒られるから潰さないよ。」
「じょっ、ジョウダンでもそういうこと言うなー!!」
炊き出しの準備ができ、おいしそうな匂いがただよってきた。
石本はその匂いをかぎながら言った。
「あー、お腹すいた〜。 そう言えば朝しか食べてないや。 ちょっともらってもいい?」
すると川田が、
「ダメに決まってるだろ。 お前が食ったら一瞬でなくなるだろ。」
どこに行っても邪魔もの扱いされる石本をみかねて、部長がウェイトに言った。
「石本だけ先にもとにもどしてやってくれませんか?」
するとウェイトが言いにくそうに言った。
「私もそうしてやりたいが・・・実は私達は元に戻す薬を持ってないんだ。
あの薬はメンダールワーイが独自に開発したものなんだ。 だから、やつらを
 捕まえないことには・・・」
「そうですか・・・」

ヴィーン・・・

そのとき、上空で何か音がした。
みんなが音のした方に向いた。
そこには、空中に映像が映し出されていた。
映っているのは宝田教授だった。
「おい、宇宙パトロールと相撲部員!! この映像が見えてるか?」
映像は、宝田教授の手がアップに映された。
指には小さな松永が摘まれていた。
「こいつを助けたいなら宇宙パトロールを撤退させるんだ。」
太田が言った。
「何か忘れてると思ったら、松永忘れてた。」
ウェイトが部長に言った。
「あの松永というのは、君たちの仲間なのかね?」
「そうです。」
「まずいことになったなー。」
石本はちょっと面白がって言った。
「松永君、また縮んじゃってたんだー。 ってことは、今の僕には見えないくらい
 小さいのかなー。」
「石本ー、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!」
そして映像は消えた・・・


そしてボスは再びダイちゃんの部屋の前でお願いしていた。
「ダイちゃーん、もうちょっとだけ手伝ってほしいんだけど。だめ?
 そういえば宇宙パトロールのやつがダイちゃんの悪口言ってたよ。デブだとか、
 弱虫だから逃げたんだとか言ってたよ。」 

第八十九話

……などとボスは必死で言っていたが、その声はテレビに熱中しながらも
「ある事」をしていたダイちゃんにはとどいていなかった。その「ある事」
とは……。

100245 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:55]
 なんでここで敵にやられるかね

100246 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:55]
 やられた

100247 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:56]
 負けた゜。・(つД`)・。・゜・

100248 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:56]
 100000げと

100249 名前 ダイちゃん [256398/547 76:56]
 敵はネ申

……と、上記のごとくテレビの隣の端末で、実況チャットをしていたのだった。
ダイちゃんの部屋の前に居るボスの所へ宝田教授が来た。
「ボス、どうです?」
「ちょっ黙ってろ、今説得中だ。ダイちゃ〜ン」
 そのときである……。

100384 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:58]
 100249誌ね

100385 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:59]
 100249はリアル消防

100386 名前 実況中だよ名無しさん [256398/547 76:60]
 100249の母です。このたびは息子が大変ご迷惑(ry

 反応が一転、ダイちゃんたたきに転じた。ダイちゃんは、ボスの言葉ではなく
こちらに反応した。

怒りゲージ:MIN□□□□□□□MAX
怒りゲージ:MIN■■□□□□□MAX
怒りゲージ:MIN■■■■□□□MAX
怒りゲージ:MIN■■■■■■■MAX■■

 ダイちゃんの怒りゲージが振りきったとき、彼は自分の意思に関係なく巨大化する。
ボスの自宅は一瞬で半分が破壊された。宝田教授は、
「ボス、やりましたね。」
「この家新築したばかりなのに〜。ダイちゃん、よくやった、この怒りを……。」
 巨大化したダイちゃんはボスの言う事を無視して、地響きを立てながら歩きだした。
「よくも僕をバカにしたな〜。みんな踏み潰してやルー。」


 一方、部長たちとウェイトの居るところに再び映像が現れた。部長は、
「また、何か要求してくるのか。」
「松永君、大丈夫かな〜。」
 石本が言う。だがそれはニュース映像だった。ウェイトは、
「本来は緊急放送用の回線です。さっきはその回線をのっとって連絡してきたのです。」
『突然ハヤシーダ星に巨人が出現しました。政府と宇宙連合は緊急対策本部を設置……。』
 画面には先ほど部長たちの前に現れた少年、ダイちゃんが映し出されていた。 

第九十話

「あいつはさっきの・・・」
「ダイちゃんだ。」
部長達は、ダイちゃんに力を見せつけられたあとだったので
少しビビっていた。
すると、ニュース映像が途中で乱れて
再び宝田教授が映った。
「どうだ。ニュースの映像を見ただろう。 これは脅しじゃない。 早く宇宙パトロールを
 撤退させないと、この松永だけじゃなく全てのものが踏みつぶされるぞ。」
宝田教授はそれだけを伝えると消えてしまい、元のニュースにもどった。
ウェイトが言った。
「ますますマズイことになってしまった。 言う通り、撤退した方がいいのだろうか。」
救助活動はほぼ終わってはいたが、途中で止まってしまっていた。
部長がウェイトに言った。
「俺達を、あのダイちゃんという少年のところに転送することはできますか?」
ウェイトが驚いて言った。
「転送装置は無事だが、いったいどうするつもりだ? ダイちゃんをこれ以上怒らせたら、
 何をするかわからないぞ。」
すると部長が、
「あんなにすごい能力を持っていても、中身はまだ子供ですよ。 うまく口でだますことが
 できるかもしれない。 うまくいけば、松永の居場所もわかるかもしれない。」
石本が言った。
「えー、またあの子と戦うの? 今度こそ潰されちゃうよー。」
部長が言った。
「戦いに行くんじゃない、俺達が仲間になるふりをするんだ。 そうすれば、松永が捕まってる
 アジトに案内させられるかもしれないだろ。」 

第九十一話

 ウェイトはしばらく考えていたが、
「わかった。気をつけてくれ。それからこの事は一応宇宙パトロールの本隊には
 連絡しておく。やつらは撤退させろは言ったが、連絡するなとは言って
 いないからな。」
 次の瞬間、部長たちの姿は消えた。


-ズドーン、ズドーン、バリバリ……-

 その頃、怒り狂ったダイちゃんは街の進行方向のあらゆる物をつ踏み潰しながら
街の中心部へ向かって歩いていた。彼を迎え撃つべく、ハヤシーダ星の防衛軍が
待機していた。
「全軍、攻撃準備完了しました。」
「宇宙連合の艦隊も間もなく到着するそうです。」
「巨人4人を目視で確認。」
「ちょっと待て、なんで4人なんだ?一人じゃないのか?」
 もちろんそれはダイちゃんと、彼の前に転送された部長たち3人だった。
ダイちゃんは部長たちとほぼ同サイズだった。石本は、
「あ〜よかった。僕たちよりずっと大きくなっていたらそのまま踏み潰されて
 いたよ。」
 突然現れた3人を見たダイちゃんは、
「なんだよー。こんなところに何しに来たんだ。」
 すると部長は、
「まあ落ち着け。別にけんかしようって訳じゃない。」
「じゃ、何しに来たの、今気分が悪いんだ。ちょっとどいてくれる?」
 ダイちゃんが言うと今度は飯田が、
「居や、俺たちは君の友達になろうかと思って会いに来たんだ。」
「そうなの?」
「そうだ。」
 部長が言うと、石本も、
「そうそう。」
「ふーん。」
 ダイちゃんが言う。そして、
「それならあそこに居るおじさんたちを踏み潰してくれる?友達なら、
 やってくれるよね。」
 ダイちゃんが指差す先には、先ほどのハヤシーダ星の防衛軍。部長と飯田は
戸惑ったが石本は、
「本当、踏み潰していいの?やった〜。」
 石本は止めたくても止められない部長と飯田を横目にハヤシーダ星の防衛軍に
一人喜んで向かっていった。 

第九十二話

石本は部長の方に振り向いてもう一度確認した。
「止めないんですか? 僕、今度こそ踏んじゃいますよ。」
「・・・・。」
部長はダイちゃんの機嫌が悪くならないよう、何も言えない。
すると石本が。
「部長は踏み潰したいと思わないんですか? 足元にちょこちょこ動く生き物がいても。」
部長は少し焦った感じで言った。
「そ、そりゃまぁ・・・少しは」
部長は、変なことを言ってしまったと思い、恥ずかしそうに飯田の方を見た。
すると飯田が、
「安心しろ。俺も踏み潰したい気持ちと戦ってるんだ。 これだけ巨大化すれば誰だって
 やってみたくなるさ。 それより今は、どうやって乗り切るかだ。」
そうしてる内に石本はハヤシーダ星の防衛軍の前まで来ていた。
そしてうれしそうに足を上げた。
「それじゃ、踏んじゃいまーす。」

ドオオオオンッ!!

石本が足を踏み下ろそうとしたとき、どこからか大砲の弾が飛んできて石本の腹に直撃した。
石本はその反動で地響きをたてて尻餅をついた。
「痛ーい。 怪我したらどうするんだよー。」
石本は腹をさすりながら、大砲が飛んできた方を見た。
すると、そこには巨大な大砲を装備した戦艦が待機していた。
ダイちゃんが石本に言った。
「僕より年上のくせに弱っちいの。 あんなの僕ならぜんぜん平気だよ。」
ダイちゃんは続けて3人に言った。
「お前達、僕に仲間になりたいんだろ。 じゃあ僕と協力して必殺技でアレをぶっ壊そうよ。」
3人はダイちゃんのやろうとしてることがわからなかったが、
怒らせるとマズイのでとりあえず頷いた。
するとダイちゃんは戦艦を指差して言った。
「お前はダイちゃん砲でやっつけてやる!」
ダイちゃんはヒーローの変身ポーズをまねして言った。
「超キョダーイ変身!!」

ズガアアアーーン

ダイちゃんは一瞬でものすごく巨大化した。
その大きさは、部長達を指先に乗せられるほどだった。
ダイちゃんは部長達の前に胡座をかいて座った。
「よーし、3人とも僕と合体だっ!!」
部長達はどうすればいいのかわからない。
「合体?」
「どうすればいいの?」
おろおろしている3人を見てダイちゃんが、
「もう! 僕のちんちんに入ればいいの!」
飯田が嫌そうに部長に言った。
「どうする?」
「ここまできたらやるしかない。 松永を助けるためだ。」
「・・・年下のチンコの中に入るなんて・・・・。」
3人は仕方なく、ダイちゃんの言う通りにチンコに入っていった。
3人が入り終わったのを確認したダイちゃんは立ち上がって言った。
「ダイちゃん砲、準備完了。」
そしてチンコを指で摘み、戦艦の方に向けた。
「ひっさーつっ! ダイちゃん砲、発射ーーー!!!」 

第九十三話

 ここは部長たちに攻撃した戦艦「ア・ガホー」のブリッジ、
「艦長、かなり効果があるようです。」
「むむ。わが宇宙連合が誇る対巨人兵器用のエクサ粒子砲だからな。」
「しかし、地球にも巨人兵器が現れて、ほぼ壊滅状態になったという話しは
 ごぞんじですか?」
「まだ地球は宇宙連合に加入はまだ先だといわれていたが、こんな事に
 なってしまうとは……。加入させていれば簡単に援軍も送れたのだが……。」
「艦長、大変です。巨人兵器の一体の巨大化を目視確認、詳細分析中、先ほどの
 巨人兵器の一体がほぼ100倍に巨大化した模様。」
「なんだと!?」

-ジョボボボボーーーーーッッ-

 ダイちゃんのチンコから、大量の小便が放出された。

「うわぁぁぁぁっ!!」
「ぶつかっちゃう」
 その水圧でぶっ飛ばされた部長たちは戦艦に向かっていく。だが、部長たち3人は
戦艦には命中せず、その上を通過していった。だが……。

-ドォォォォン-

 ダイちゃんのチンコから放出された大量の小便の水圧と衝撃によって戦艦は簡単に
破壊された。ダイちゃんは、ポーズを取りながら
「無敵超巨人、ハイパージャイアントにかなう物は無いのだぁぁ」


 その頃、更にハヤシーダ星に向かっていた超巨大宇宙戦艦「ヤ・マザキ」のブリッジ
「艦長、大変です。戦艦ア・ガホーからの通信が途絶えました。」
「まさか、あのア・ガホーが破壊されたというのか?」
「何かこちらに向かってきます。回避、間に合いません。」

-ドォォォォン-

 部長たち3人は次々と、超巨大宇宙戦艦「ヤ・マザキ」に命中、貫通した。

-ぷよーん-

「おかえりー。」
 部長たち3人はそのままハヤシーダ星を一周してダイちゃんのお腹で受けとめられた
のだった。


 同じころ、ウェイトとその手伝いをしていた相撲部員たちは避難活動も完了し、
休憩室でテレビを見ていた。川田が、
「ああ、こう言うような番組を多田に案内された部屋で見てたんだよな。もし彼が
 俺たちの味方じゃなかったら大変な事になっていたかもな。」
 するとウェイトが、
「これは『無敵超巨人、ハイパージャイアント』と言う宇宙の子供たちに人気の
 巨人型ヒーロー番組です。あなたたちが見たのはこのような映像を洗脳用に編集、
 加工した物でしょう。でもこの所の巨人兵器騒ぎでうち切りの話も出ている
 んですよね。」
 そのとき、突然画面が切り替わり、
『番組の途中ですがニュースです。ハヤシーダ星に向かった宇宙連合が誇る
 超巨大宇宙戦艦「ヤ・マザキ」を中心とした艦隊は巨人型兵器により壊滅的な被害を
 受けた模様。』
 ウェイトが、
「まさか、ヤ・マザキ級の戦艦までやられてしまうとは……。」
「その戦艦は、この船と同じくらいの大きさなんですか?」
 川田たちは、ウェイトとともにスペースコロニーとなっている超巨大宇宙船に
戻っていたのだ。ウェイトは、
「この船に比べたら大した事無いですよ。修理用ドックにもらくらくはいれます。」
「この船で応援に……って無理ですよね。もしものことがあれば避難した人たちが……。」
「この船は謎の宇宙超古代文明の技術で作られた。だがその全てを知る者はごく一部の
 者だけだ。私も担当の船以外の操縦法以外は教えられていない。」
 それを聞いた部員たちは、
「宇宙超古代文明だって。」
「なんかすごいことになってきたな。」
「でもそれより、部長たち大丈夫かなぁ。」


 さらにその頃、部長たち3人をダイちゃんはみおろしながら、
「そうだな〜、今度はどうしようかなぁ。……。」 

第九十四話

ダイちゃんは自分が破壊した街や戦艦を満足げに眺めて言った。
「ちょっとは気分もすっきりしたかなー。」
ダイちゃんは部長達と同じ大きさに戻った。

シュルルル・・・・

「ね、言ったでしょ。 たぶん宇宙のどこ探しても僕より強いやつはいないよ。」
部長達も、ダイちゃんに話を合わせた。
「そ、そうだね。ダイちゃんすごいね。みんなダイちゃんを尊敬してるよ。」
「そうだ、ダイちゃんの家に行きたいなー。 友達として、ダイちゃんの家で遊びたいなー。」
するとダイちゃんは少し嫌そうな顔で言った。
「友達? 僕は友達なんかいらないよ。 僕は誰よりも上の存在なんだもん。」
部長はあわてて言い直した。
「じゃあ、弟子にしてもらおうかなー?」
ダイちゃんは少し考えて、
「別にいいけどさー、僕の遊びにつきあいきれるの?」
嫌な予感がしたが、ダイちゃんの家(メンダールワーイのアジト)に行くために、仕方なく話に乗った。
「あー、どんな遊びでもつきあうよ。」


その頃、他の部員達はテレビの前でニュースを見続けていた。
『戦艦が破壊されたときの映像が届いたようなので、御覧下さい。』
画面にダイちゃんが映し出された。
それを見た太田が、
「なんだよこれ。 ガキが裸で小便してるだけじゃねーか。 映像間違えたんじゃないか?」
ウェイトが画面を指差して言った。
「ここの小便の着水地点をよく見ろ。 これが破壊された戦艦だ。」
部員達は全員目をまるくした。
「う、うそだろ。」 

第九十五話

「「「ええええええーっっっっ」」」
 部員たちは驚いた。ウェイトから戦艦だと説明されなかったらなんだかわからない
くらいに破壊され尽くしていたのだ。
「どっかの彫刻家が作った海上オブジェじゃ、なかったのか……。」
「そんな発想するだけでもすごいよ、もとの形が何だかわからない。」
 ウェイトは、
「宇宙連合の無敵戦艦といわれた物が一瞬でスクラップだ。彼に対抗できる兵器は
 宇宙連合には存在しない……。」
 すると北島は、
「確かウェイトさんはこの船が謎の宇宙超古代文明とかなんとか言っていたけどその力で
 何とかならないんですか……。」
 するとウェイトは少し考えて、
「私だけでは判断できない、あの薬や巨人に対して君たちの知っている事を全て
 話してくれ。上に報告して判断を仰ぐ。」


 数時間後ウェイトと部員たちは先ほどの救助活動に使っていた宇宙船で地球へ
向かっていた。太田は、
「でも小さくするための薬を作ったのは宝田教授で、僕たちは材料を集めた
 だけなんですよ。」
 川田も、
「覚えている分の材料は言ったはずだけど完璧かどうか、それに地球に材料が
 まだ残っているか……。」
 するとウェイトは、
「宇宙パトロールの捜査で薬が発見されるを待ってはいられない。君たちの言った
 材料とその薬を飲ませた(実は座薬のようにケツの穴から入ったのだが)巨人を
 見つけて体液を取れば成分を特定できるはずだ。」


 同じ頃ボスと宝田教授はボールのような形の宇宙船でとある惑星へ向かっていた。
もちろん、小さくした松永を連れてだ。宝田教授は、
「まさかこんな所に我々の拠点があるとは宇宙パトロールの名捜査官でも気づくまい。
 しばらくはここにいることになりそうだ。おい、ついたぞ。」
「なんだここは〜。」
 宝田教授に下ろされた松永は自分がとんでもない所に連れてこられた事を
思い知らされた。 

第九十六話

宝田教授は松永に景色を見せながら言った。
「どうだ。ここに見覚えないか?」
この星の景色はどこかに似ていた。
「さっきの温泉のミニチュア・・・」
松永がつぶやくと宝田教授が、
「そうだ、君たちがいた温泉のミニチュアは、この星の一部をそのまま転送したのだ。」
ミニチュアの山や街がリアルだったのは、もともとのサイズだったからだった。
宝田教授は続けて言った。
「宇宙パトロールのやつらは、この星にはこない。 なぜならこの星は、「保護惑星」に
 指定されているからな。」
「保護惑星?」
「そうだ。 宇宙パトロールは自分達と同サイズの人間のいる惑星と協定を結び、
 力を強めている。 だが、こういう小さいこびとの星はそういうわけにはいかない。
 だから、SOSの信号が出たときしか宇宙パトロールはこないのだ。」
すると松永が、
「お前達を見て、SOSを出さないわけないだろ!」
宝田教授は鼻で笑って言った。
「残念だったな。 私達はここでは巨人様として崇められているのだ。 むしろ、
 感謝される存在なのだよ。 つまり、お前のたすけはこないと言うことだ。」
「・・・・。」
自信満々な宝田教授の横で、少し不安そうなボスが言った。
「ダイちゃん、置いてきて大丈夫かな? 怒って私を食ったりしないだろうか・・・」
すると宝田教授が、
「大丈夫ですよボス。 あの子は単純だから、うまく言って誤魔化せばいいんですよ。」
「そ、そうだな。」


その頃、部長達はダイちゃんに案内されてダイちゃんの家(メンダールワーイのアジト)
に来ていた。
「ここがアジトなのか・・・半分破壊されている。 原因はなんとなくわかるが。」
ダイちゃんは元のサイズに縮んで、その建物の中に入って行った。
部長達3人は、破壊されている部分から中を覗いていた。
「この中に松永が・・・」
ダイちゃんはボス(父親)を探していたが、見つかるはずなかった。
しばらく探したあと、電子版にメモが書かれていることに気付いた。
(ダイちゃんへ。 パパ達は緊急の用事ができたので、少し出かけます。
 おとなしく待っててね!)
ダイちゃんは再び怒りMAXになってしまった。
「僕をおいて行くなんて・・・・絶対食ってやる!」 

第九十七話

「あ、地球だ。」
 窓から外を見ていた北島が言う。ウェイトと部員たちが乗った宇宙船は
ワープした後、地球の見える場所へ到着した。川田はウェイトに、
「所で例の巨人はどこにいるんでしょうか。」
 するとウェイトは、
「地球に残っている私たちの仲間から逐次報告を受けている。見つけるのには
 苦労しないと思う。」
 ウェイトは通信装置を操作し、仲間と交信をはじめた。
「こちらは救助船3044号のウェイトだ。調査船9876号応答せよ。」
『こちら調査船9876号。船長のオールだ。』
「例の巨人はどうなった。」
『縮小を続けていましたが、見えなくなりました。』
 横で交信を聞いていた部員たちは、
「見えなくなったって、もう見えないくらい小さくなったのか?」
「まさか……。」
「でも俺たちが地球を離れてかなり時間が経っているし……。」
 ウェイトは、
「ちょっと黙っていてくれ。」
 ウェイトはそう言って交信を続ける。
「見えなくなったというのは、そんなに小さくなってしまったのか?」
『いえ、最後に見たときは2、30メートル程度でした。少し前に突然霧が出てきて
 見失ったのです。』


 一方、怒りMAXになったダイちゃんは再び巨大化した。

-ガラガラ-

 半分残っていたダイちゃんの家は完全に破壊された。
「おい、おまえら!」
 ダイちゃんは部長たちに言う。
「弟子になったんだロー。弟子は師匠に従う物だ。」
 部長は、
「は、はい。所でこれからどうするんだ。いや、どうするんですか?」
「とうちゃんを探しにいく、ついて来い。」
 石本は、
「え〜、でも僕たちは君のお父さんの顔知らないし……。」
「とにかくついてくればいいんだ。とうちゃんのいきそうな所を片っ端から探してやる。」
 部長たちは仕方なくダイちゃんについていった。


 ウェイトと部員たちの乗った宇宙船は巨人、すなわち福田(久しぶりに名前が
出てきましたね)がいなくなったあたりの上空を飛んでいた。ウェイトは、
「おかしいな。これだけ探しても見つからないなんて……。」
 そのときウェイトと部員たちの乗った宇宙船に通信が入った。
『こちら調査船9876号から救助船3044号へ、例の巨人が現れました。危険なので
 退避します。救助船3044号もこの場所から至急退避してください。』 

第九十八話

ウェイトは調査船9876号に、
「危険とはどういうことだ? 2、30メートルぐらいならなんとかなるだろう。」
すると調査船は、
『いえ、現在の巨人の推定サイズは500メートルです。 更に巨大化が続いています。』
「なんだと!? さっきの報告と全然違うじゃないか!」
『おそらく霧のせいだと思われます。 この霧は巨人が、ある工場を破壊したときに発生しました。
 巨人の体内に残っている薬と反応したのでしょう。 とにかく危険です。』
「仕方ない・・・いったん大気圏外に退避する。」
『了解。こちらも退避します。』
部員達が乗っている救助船は再び宇宙にもどった。
川田が言った。
「そういえばあいつ、俺達が逃げてたときも巨大化したよな。 あのときは、軍隊の攻撃の
あとだったけど。」


そして、ダイちゃんの方は・・・
石本が言った。
「ねえダイちゃん、どこに行こうとしてるの?」
ダイちゃんは、
「もうこの星にはいないはずだよ。 とうちゃんはいつも危なくなったら逃げるんだ。」
部長が言った。
「この星にいないって、どうやって探すんだ?」
「宇宙船でさがすんだよ。」
石本が言った。
「転送装置とか使わないの?」
「転送装置ですぐに行けるようなとこに逃げるわけないだろ!」
すると飯田が、
「俺達が乗れるような宇宙船なんてあるのか?」
「あるよ。 おまえらさっきからうるさいぞ! 弟子のくせに師匠に気安く話し掛けるな。」 

第九十九話

 部長たち三人は街から離れて、海に出た。海岸のあちこちに不思議な形の岩があり、
遠くに島らしき物が見える。ダイちゃんはその中からさいころのような形の石を
拾い上げた。それは自然にできた物とすればあまりにもきれいな形をしていた。石本は、
「そんな石どうするの?」
「遺跡からみつけたんだよ。とうちゃんたちは遺跡の文字を解読して巨人になる薬を
 開発する事ができたんだ。なんかものすごい昔の遺跡らしいけど。たしか謎の
 宇宙超古代文明とか言っていたな……。」
 確かにそれには文字らしき物が刻まれている。それを見た飯田は、
「遺跡とかいったってそんな昔の物が使えるのかなぁ。」
 するとダイちゃんは、
「うるさいな。文句を言うと連れていってやらないぞ。」
 ダイちゃんはさいころ石をこすると、汚れが取れ石は金属のように輝きだした。
部長は、
「ずっと海に浸かっていてまったくさびていないなんて……。」
 ダイちゃんはさいころ石に話しかけるように、
「宇宙船、ダイちゃん1号、起動。」
『音声により登録名確認。システム起動』
 あちこちの空中にに突然文字や図形が浮かび上がる。そのとき、

-ゴゴゴゴ……-

 地鳴りがしたかと思うと遠くに見えていた島が崩れ始める。そして中から宇宙船が
姿を現した。その形は以前水族館で見たような深海魚のような形だった。それをみた
部長たちは、
「動いてルー。」
「まじかよ〜。」
「おい、ぼやぼやしていると置いていくぞ。」


「巨人から薬の成分を分析はするのはかなり難しくなりましたね。」
 ウェイトは言った。川田は、
「せっかくここまで来たのに。」
「とにかく一度戻りましょう。」
 ウエイトと部員たちの乗った救助船と、巨人を発見した調査船は地球を
離れようとしていた。そのとき、2隻の宇宙船と入れ代りに地球へ向かう光に、
気づく者はなかった。


「あ、いたいた。」
 ダイちゃん1号で地球に到着した部長たちは巨大化が進み既に身長が一キロメートルに
近づきつつある福田の所へやってきた。福田は、
「なんだぁ〜。でっかい魚が空を泳いでる。」
「ええーっ、またあいつの所へいくのぉー。」
 石本が言う。ダイちゃんは、
「あ、知ってるの?まぁ、とにかくお前たちだけでは頼りないから助っ人を探しに
 とうちゃんたちが目をつけていた星に立ち寄ってみたんだけど。だったら都合が
 いいや、あいつを捕まえてきてよ。」 

第百話

石本は首をふりながら、
「捕まえられるわけないでしょ! 僕達が近づいたって踏みつぶされちゃうよー。」
今度ばかりは部長も、
「そうだな、俺達はダイちゃんみたいに巨大化できないから。」
飯田も、
「ダイちゃんが一番強いから、ダイちゃん捕まえてくれないかな〜?」
するとダイちゃんは、
「こういうのは弟子の仕事だろ! 師匠が行ってどうするんだよ。」
そう言って、何かのスイッチを押した。

ヴィイイイン・・・

部長達の足元の床が開いた。
「そ・・・そんなぁっ!」
「うわああああ」
ダイちゃん1号が飛んでたのは超巨大福田の真上だった。
3人は福田の肩にバウンドして地面に落ちた。

ズズウウウン・・・

超巨大福田が3人に気付き、話しかけてきた。
「ん? 何かと思えば、お前らだったのか。 あの変な怪物にやられたのかと思ってたぞ。」
3人は捕まえるどころか、逃げたい気持ちでいっぱいだった。
「ど、どうする?」
「これじゃあこっちが捕まっちゃうよ。」
3人の目の前で福田の巨大化が続いている。
福田が言った。
「お前らがどんどん小さくなるように見える。 俺が巨大化してるってことか。」
3人はたまらなくなって福田の前から逃げ出そうとした。
「おいおい、せっかく再会できたんだ。 逃げるなよ。 踏みつぶすぞ。」
石本がつまずいて転んだ。
そしてその上には巨大な福田の足が迫ってきた。
「もうだめだー、潰されちゃうよー。」
そのときっ!

「まてっ! そいつは僕の弟子だぞっ!」
いつの間にかダイちゃんが福田の前に下りていた。
ダイちゃんを見た福田が、
「なんだー? このガキは。 お前らこんなやつの弟子なのか?」
部長と飯田はダイちゃんがなぜ自分達を先におろしたのかわかった。
「つまり、ダイちゃんはかっこよく登場したかったってことか・・・」 

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