04379号室へ

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{1}オシボヘノ市
 私の名はなみな、この街へ引っ越して来て1ヶ月。 引越しは突然だった。お父さんが沢山借金していたのがわかって、 なんとかコンサルタントとか言う人が突然やってきて……。 急いで荷造りして、後はよく覚えてないけど、 結局これって夜逃げって言うのかな……。 仲良くしていた友達とわかれるのは最初つらかったけど、 メールや電話もできるし、ここへ来て新しい友達も出来た。 街の人はみんな親切で、面白い人もいっぱいる。 でも、でも……。

-すっとーん-

「いたたたた……」
 遅刻しそうになった私は近道しようと通学路にある 空家の生垣を飛び越えた瞬間、そこに滅茶苦茶深い穴が あったらしいの。
「なんでこうなるノー、ここに来て遅刻だけはしたことないのが 自慢だったのに〜(涙)」
 そのとき、起きあがろうとした私の目の前を何かが通った。
「なにこれ……。」
 小さな動物かと思ったが、人間っぽいというか人間そのもの。 小さな人間、すなわちこびとだった。でもそのきはそれを よく観察する余裕なんてなかった。次の瞬間、私の体の下で 何かがもぞもぞ動いているのを感じたの。
「きゃあっ!」
 思わず私はその場で飛び起きた。そこにもいた。こびと。 私が最初見た子の倍位のこびとさんが私の体の下にいたの。
(どうしよう。この子潰しちゃったのかな……)
 そう思ったとき、私の体の下で倒れていたこびとが起きあがった。
(ああ、よかった……)
 そう思ったとき、私に足元に何人ものこびとさんたちが 何か叫びながら集まってきた。何をいっているのこ聞こうとしたけど、 声が小さくてよく聞き取れない。よく見ると倒れてた子と 同じような服を着ている。仲間なのかしら。私は、
「あ、ごめんね。私……。」
 私はそう言いかけたとき、こびとたちが何か私に投げつけてきた。 何かがぶつけられているのはわかるけど全然いたくない。
「怒ってるの?ええっと……。」
 そう言って私はこびさんたちのほうへ一歩動いた。 もちろん踏み潰したりしないように。でもこびとさんたちは また何か叫びながら逃げていった。
「待って……。」
 私は呼びかけたが、こびとさんたちは戻ってこなかった。
「嫌われちゃったのかな?」
 私がそう思ったとき。
「ありがとうございました。」
 小さい声だったが、はっきりと聞き取れた。
「あのー。」
 声の主は確認できなかったが、私はその声に答えた。
「勇者様、どうぞ術をお解きください。」
「あの〜、術って……。」
 相手も確認できないのに内容も訳のわからない事言って もう頭はパニック状態。またこびとなのだろうか。 そうなら下手に動けば踏み潰しちゃうかも。とにかく声の主を 探そうと足元をよく見ていると突然足もとの地面が近づいてくるような 感覚がする。足元の草のような物がどんどん大きくなる。 足元に何かがいることがわかった。それが段々大きくなり 先ほどと同じようなこびとらしいと思ったら、 小さな子供くらいの大きさになった。そして視線は私より 上になった。そして私のお父さんくらいの年の人が 目の前に立っていた。とにかく私は今までの事が まったくわからない。この人に聞けば何かわかるかもしれない。 私はその人に話しかけた。
「ええっと、いろいろ聞きたい事あるんですけど。 あっ挨拶がまだですね。私は南なみな。あの名前だけでも……。」
「なみな様ですか。私は神官ナケ・ナシーノです。 私達をお救いくださるためによくいらっしゃいました。」
「あの〜。自分から来たんじゃなくて、落ちたと言うか……。」
「それは私たちをお救いくださった女神様のお導きです。」
「ええーっ、なにも私みたいな女の子に頼まないで、 その女神様にお願いしてみたらいいと思うんですけど。」
「その我々の世界をお守りくださっていた女神ヌース様が お選びになった勇者が、なみな様でございます。」
 そのとき私は大変な事に気付いた。そして言葉を発した。
「済みませーん。」
「なみな様。どうなさいました?」
「所で今何時?」
「なみな様。申し訳ありませんが。もう一度ご質問を。」
「私は時間を聞いているの。学校に遅刻しそうだったのよー。」
「時間でございますか。お昼前ですからラギの刻の 4分の2くらいでしょうか……。」
「そう言う時間の呼び方じゃなくて、八時とか九時とか……。」
「もうし訳ありませんが。なみな様が使われているような数字で 数える時間の呼び方は存じ上げておりません。」
 私は少し時間を置いて考えた。ここは私の知らない世界である。 時間の進み方や数え方は同じとは限らないのかもしれない。 今すんでいる街へ引っ越したのも突然だったが、 なぜか天気ははっきりしない日が続いていたものの、 一応1日は24時間有って、1年は365日。今年はうるう年で 366日有った。でもここへ来たときの衝撃は、突然引っ越して 今すんでいる。いや先ほどまでにいた街へ来たときとは 比べ物にならないほどの衝撃だった。私は突然どこかに 落ちただけだと思ったのに。いきなり知らない世界に 来てしまうなんて。しかし幸か不幸か質問すべき人物は 目の前にいる。ちゃんと会話もできることは先刻承知済みだ。 そのとき、神官ナケ・ナシーノと名乗った男が声をかけてきた。
「なみな様。ご質問がなければ。こちらへいらしてください。」
「あのー。もうひとつ聞いていい?」
「なんなりと。」
「ええっと、こことなんという町?あるいは村?」
「はい、私どもは女神ヌース様に導かれ、このオシボヘノの 地へと逃れたのです。」
 私はオシボヘノという言葉を聞いて愕然(がくぜん)とした。 それは私が先ほど住んでいた街の名前だったのだ。

{2}なぜ通じるの!?
 もしかして……タイムスリップ!?なんだか知らないけど きっと私が住んでいる町ができるズーっと前の時代に 来てしまったのかもしれない。でもさっきのこびとたちは何? というか私が大きくなっていたような……。考えれば考えるほど、 訳がわからなくなってきた。
「なみな様。着きました。」
 ナケが再び声をかけたので、私ははっとした。
「着いたって……ここは……。」
「なみな様には、こちらで生活していただきます。なみな様のような お方が現れたときのために用意しておりました。」
 私はナケに案内されてどうしても廃屋にしか見えない建物の中に 入っていった。でも中に入ったときにもっとびっくりした。なぜなら 外見から想像できないほどきれいに整理されていただから。 それに見とれているとナケが、
「勇者様、敵から身を隠すことを最優先にいたしましたため、 このような場所で申し訳ありませんが、勇者様がお望みの物は、 直ちに準備いたします。」
「あ、ありがとうございます(^_^;)」
 私がそう答えたとき、ドアを開けてそのドアをかがめて 入らなければいけないくらい大きな人が入ってきた。 その人は筋肉質だが、スタイルの良い女性だった。その人は 回りを見まわし、
「ナケ、勇者が現れたというのは本当か?どこにいるのだ?」
 するとナケは私を指差して、
「このお方が勇者なみな様でございます。」
 先ほどの背の高い女の人はかがんで私を見た。私は緊張して、
「あ……あの……。」

 -♪ちゃんちゃかちゃちゃちゃちや-

 私はこんな状況の中、反射的に携帯を取りだした。かけて来たのはクラスメートの小雪だ。
『なみなー。どうしたノー。いきなり学校休んで。』
「あ、えーっと登校中に急用が出来ちゃって……。病気とかそんなんじゃないから。」
『急用って……どうしたの?今どこ?』
「多分オシボヘノ市内だと思うんだけど駅とか近くにないみたいだし、ちょっとすぐには戻れないと思う。」
『じゃ切るねー。』
 電話を切った後、私は二人のチョー強い視線を感じていた。私はこまって、
「ええっとこれねー。シーカーのだけどねー。こっちでもそのまま使えるんでびっくりしたのよー。」
 が、ナケと大きな女の人は私をじっと見ていた。そのとき、

-どんどんどん-

 外で壁をたたく音がする。外から声、
「おい、ここを開けろ、伝説の勇者がそこにいるはずだ。」
 大きな女の人は、
「ナケ、つけられたな。」
 そう言って持っていた剣を抜いて構えた。そのとき、

-バリバリバリ-

 目の前の壁が壊れ、物凄い土煙が上がる。 土煙がおさまると、そこにはナケと話した大きな女の人より ずーっと大きな女の人が立っていた。ちょっとややこしくなるけど、 大きな女の人は、先ほど現れた彼女よりずーっと大きな女の人に 向かって剣を抜き、構えたってさっき言ったね。とにかく先ほど 構えた剣で彼女の目の前のずーっと大きな女の人を 切りつけようとした。すると、ずーっと大きな女の人は手を大きく動かした。

-バーン、ドッスーン-

 その手がちょっと当たっただけなのに、大きな女の人はその衝撃に飛ばされ、私のすぐそばの壁にたたきつけられた。そのすぐあとにずーっと大きな女の人は私に近づいてきた。
「彼女には手を出すな。関係ない。」
 大きな女の人はなんとか立ち上がり、ずーっと大きな女の人に向かっていった。
「うるさい。死にたくなければそっちこそ手を出すな。」
 ずーっと大きな女の人は大きな女の人をつかみ、片手で軽々と持ち上げた。 なぜかこの様子は冷静に見ることが出来た。ずーっと大きな女の人もかなり美人でスタイルもいい感じなんだけど、彼女の象のような大きな巨体とその圧倒的なパワーに感心さえしていた。 そうしているうちに、
「おい女。」
「え、あ、はい、あのー。」
 私はあわてて辺りを見回した。先ほどまでどうやら映画か何かを見ているような感じになっていたようだった。しかしこれは現実だ。ずーっと大きな女の人は片手で大きな女の人を 持ち上げたまま私に話しかけてきた。
「お前だ。」
「はい、なんでしょう。」
「見慣れぬ姿をしているが、どこから来た?」
「あ、エーっ戸ここの人にもさっき説明しようとしたんですけどー。 私にもここがどこなのかよくわからなくて。 なんか私の住んでたところというか引っ越してきたところと同じか名前が……。」
「質問を変えよう。ここに勇者が来ているらしいが、お前知らないか?」
「来たばっかりで、ここのことはよくわからないので。」
「本当に知らないのか。」
「た、多分……。」
「まさかどこかにかくしているわけじゃないだろうな。」
 ずーっと大きな女の人はさっきより強い口調で言った。
「それはないと思います。よくわかりませんけど……。」
「うそをつくとこの女がどうなるかわかっているだろうな。」
「そ、そのー、暴力はよくないと思いますぅー。ちゃんと話し合えたらわかると……。」
「そうかもしれないが、話し合いだけでは解決しないこともあるのだ。」
 ずーっと大きな女の人は片手で持ち上げていた大きな女の人を下に降ろした。 でも動いていない。私は完全にびびっていた。
「あ、まさか、死んでるテル、あなた、殺しちゃったの?」
「さあな。でもお前もこうなりたくなければ、本当のことを言うんだ。」
「あ、そんなこといわれても。」
「まだそんなことを言うかぁぁ。」
 ずーっと大きな女の人は、突然私に向かってきた。
「い、いたーい。」
 次の瞬間、私はどうなったかわからなかった。ずーっと大きな女の人がぶつかってきたのか、 その衝撃でしりもちをついたのだ。
「あ、あれ、ここどこー。」
 私がしりもちをついたまま、周りを見回すと、その様子が変わっていた。さっきまで見ていたような景色のような気もするが、なんだか雰囲気が違う。
「そうか、お前が勇者だったのか。」

{3}勇者の証

 小さいが聞き覚えのある声が、下から聞こえてきた。
「エーっと、ちょっと……。」
「大きくなったからといって勝てると思ったら大間違いだぞ。」
 私は、声の主を見つけた。私の足元にこびとがいたのだ。
「あ、エーっと、あなた……。」
 私はこびとに話しかけた。
「今日のところはこれで許してやる。」
「ちょっとこびとさん。ごめんね。」
 私はあることを確かめようと、逃げようとするこびとに手を伸ばして捕まえた。もちろんつぶしたりしないようにやさしくだ。こびとは私の手の中で必死で暴れたが、私の指を押しのけそうな力は感じなかった。
「こびとさん、怖がらないで。どうしても気になることがあるの。」

 私は捕まえたこびとの顔をよく見た。間違いない、先ほど私に話しかけてきたずーっと大きな女の人だった。先ほどまで象のような大きな人が、今では人形のようだった。
「あなた、さっきまで大きかったのに、どうしてこんなにちっちゃくなったの?」

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