20002号室 1.「消滅」前夜 2.宴
3.一日目

1.「消滅」前夜

 200X年、数年前まで小さな民宿のオーナーだった八郎は、 今では地元のちょっとしたというかかなりの有名人だ。 実は某大手企業グループとか巷でいろいろといわれるKA21の大規模な投資を受け、 現在では巨大リゾートホテルのオーナーになり、たびたびテレビの取材を受けたりもした。 そんな人生の大転換を経験した彼だが、それ以上の大変な事件に 巻き込まれるかどうかは作者の都合しだいなのである。そんな彼も今のところは 平穏な日々が続いていた。が、明らかに何かが違うという府陰気でなく 雰囲気を感じることになった。
(何や……?)
 八郎が行きつけへの店に向かっていると何か騒ぎ声が聞こえてきた。 実は昨年店の主人が店内のテレビを新しいものに変えた。 ちょうど世界サッカー大会の開催時期と重なり、サッカーのサポーターたちが押しかけ、 店は試合のたびに緒大仏wywyとにかく間抜けすぎる作者が後で見て 何のタイプミスが元で誤変換されたのか完全に忘れてしまうくらいの騒ぎになった。 しかし代表チームが思うような結果が出せず決勝トーナメントに進むことなく 姿を消すと同時にサポーターたちの姿も消え、店はテレビが新しくなったことを除き今までの 静けさを取り戻した。
(プロ野球もある意味終わったし、それてもじゃなくてそれとも相撲……最近相撲の人気が復活したんかいな……)
 八郎はそう思い店へと足を向けると、
「お父さん。」
 呼び止めたのは娘のあがりだった。
「そうそう、今日午後9時から大事なパーティがあるから忘れないできてね。 遅れてきてもいいから。」
 そう話したのはあがりではなく一緒にいた序背手、ではなく所瀬手の……と、 いつまでたってもこれまたとにかく間抜けすぎる作者が 正確にタイプできないのでこのことはあきらめて、とにかく話をしたのは 娘と同じような年恰好であるが、髪の毛の色や、雰囲気がまったく 異なっていた女性、ルフマモだった。
「そうだわ。いつものお店で一緒になるお友達も誘ってみたら。私も行くから。」
 ルフマモはそう言って八郎の手を引いた。
「あ……わかった……。」
 娘と一緒にいたのはルフマモだけではなかった。 今まで何度か彼女と一緒に来ていたメンバーも何人かいたが、 見なれない顔も居た。しかもこの「集団」の大半が長身か大柄、 さらに大きい人間もいて「巨人」というべき体格である。 確かにこんな集団がいれば目立ちまくり、人も集まってくるだろう。 その「巨人」の集団の中の一人の男が前に出た。身長は普通の人間の 倍以上は有り、なおかつボディービルダー並みの筋肉体型で、 格闘技劇画なら割とよく出て来そうな感じの大男であるが、 彼より大きな人間も何人か居るので彼自体は集団の中では割合目立たない。 ルフマモはその大男に、
「ホアッスちゃん、悪いけど先に言ってパーティの準備お願いね。 私はもう少し参加できそうな人を誘ってくるから。」
「わかった。」
 八郎はその大男を何度か見かけたこともあるが、いつ見ても威圧感を感じてしまう上に、 それより大きな人間が居るのだ。まさに巨人の国に迷い込んだガリバーの気分である。  ホアッスと呼ばれた大男をはじめとする大注目の集団は、 その場を離れておそらく八郎のホテルのほうであろうと思われる方向へ向かった。
(やれやれ。こいつらが行ったら静かになるやろ)
 そう思って巨人の恐怖から解放された八郎はあがりとルフマモの二人といつもの店に向かった。 しかし八郎は例の集団が去ったら収まると思われた騒ぎが収まる気配がないこと、 当初の騒ぎの元と思われた集団が今まで町に現れたことがなかったと いうことなど気にもしなかった。
『こちらは東京会場、カウントダウンを示すモニターは 7時間を切りました。歴史的瞬間を迎えるために会場に集まった人は 10万人をはるかに超えました。』
 八郎たちが店に入ると、店の客たちは視線をテレビから自分たちに移した。 テレビには観客でいっぱいのどこかのスタジアムが映し出されていた。 テレビの実況からわかるようにスタジアムでは野球やサッカーの試合ではなく、 何かのイベントが行われているようだった。それをみたルフマモは、
「うわー、東京のほうもすごいみたいねー。こっちもがんばらないとね。」
「何のパーティか知らんけど、こんなごっついイベントに勝てるんかいな。」
「まあ、こっちの『合併記念パーティ』会場は東京会場ほど人は入れないけど、 地元出身の有名人も呼んでるし、もちろんテレビ中継もするのよ。」
「ああ、なるほどな。」
 八郎の住んでいる地域は、昨年市町村合併が行われたばかりで 「町」から「市」へと名称が変わったばかりだった。 が、新しい「市」は財政難でそのようなイベントは行われず、 八郎はルフマモたちがその合併イベントを代わりにするのだと思った。 そのときルフマモが、
「あ、そうそう、ここにもテレビ中継が入るから。特に気を使わなくてもいいけど、 テレビで放送できないこととか言わないでね。」
「中継ゆうても地元のケーブルテレビやろ?」
「まあ、地元も来ることは来るんだけどね。」
『それでは新首都会場を見てみましょう。 あ、その前に会場付近に中継車が出ています。レポーターの大川口さん、 そっちの状況はどうでしょうか。』
 画面がスタジオから切り替わり、とある街角を映し出した。八郎は、
「なんや、どっかで見たような……。」
『ここは地元の方にはおなじみの居酒屋、 「歌留多」の前です。』
「うーん、外見も名前もどっかで聞いたような……。」
『それでは早速はいってみましょう。おじゃましまーす。』
 そのときである、さきほどテレビに出ていた女性レポーターと テレビ撮影スタッフが店内に流れ込んできた。それを見たルフマモが、
「あっ、本物の大川口さんだー。ねーねー、ほっといテレビで 報道された交際相手ってイケメン?。」
 八郎があっけに取られていると、店の客が騒ぎ始めた。 何人かの女性客が入ってきたのだ。年はおばちゃんではなく20歳前後で 美人から萌え系、アイドル系と過払いティではなく払い呈にとこれまた いつまでたっても正確にタイプできる見込みがないので間抜けな作者は 表現すること断念してしまった集団である。実はスタイルもよいのだが、 その集団の注目すべき点は全員が2メートルを超える大女だった。 女性レポーターは突然の巨大娘集団を見てびびりながらも 彼女たちにマイクを向けた。
「ど(^_^;)どうも初めまして、報道する立場でありながらほっといテレビで 熱愛報道されてしまった大川口まなみでーす。 地元の女子バレーのチームの方でしょうか?」
 すると、その中の一人が、
「はじめましてー。私たちエスツォっていう宇宙海賊やってる……。」
「宇宙海賊……ですか?」
 そのときである。

-ドーン、ズトーン-

 突然外で大きな音が響き、その音がどんどん大きくなっていった。
「どうもありがとうございました。ちょっと外へ出てみましょう。」
 そう言って女性レポーターと テレビ撮影スタッフたちは店を出て行った。
「ほとんど何も聞いてもらってないのにー。誰よー。外で騒いでルノー。」
 ルフマモが、
「マーマ〜、テレビにばっちり映ってたわよ。視聴率も上がったかもよ。」
 するとあがりが、
「この大きい人たちもルフマモさんの知り合いなん?」
「まあね。」
 一方テレビは、再びスタジオに戻った。
『それでは明日行われる“究極の合併”……。』
「合併が明日!?どういうこっちゃ?」
 八郎が言うとあがりが、
「え?お父さん知らんかったん?明日やで。」
「あ、そうやったな(^_^;)どことどこやったっけ。」
 八郎は周りにも人がいっぱい居るので、あがりとルフマモだけに 聞こえるような声でたずねた。ルフマモは、
「そーねー。まあ、ここと私の出身地ね。明日から仕事もやりやすくなるかなーって感じ。」
「ああ、なるほどな。」
「それじゃもう一度言うけど、パーティに忘れないで来てね。あ、それと これもっていかないと入れないから。」
 ルフマモは八郎にIDカードを渡すとその場を立ち去った。

2.宴

 八郎は8時45分ごろ、あがりとパーティ会場へと向かった。
「結構人多いな。」
「ここやで。」
 あがりはそう言って会場への扉を開けた。八郎はあがりについてはいると、
「ここでええんか?何やこないだやった芸能人の披露宴会場みたいやんか。」
 そのとき、二人の目の前にルフマモが見たことのない派手な衣装を着て現れ、
「ちゃんと来てくれたのね。席はこっちよ。」
 八郎が戸惑いながら、
「あ、ああ……。」
 次の瞬間、八郎の体は突然宙に浮いた。その直後、見慣れた巨大な顔と目が合う。
「こっちだ。」
 八郎もよく知っているルフマモの知り合い、実は仕事仲間でもある大男、 ホアッスだった。彼はメタボ気味で少々重めの八郎を片手で軽々と持ち上げ、 彼の席へと連れて行った。
『歴史的瞬間までついに3時間となりました。 会場へお越しの皆さんはここで歴史的瞬間を迎えることになる訳です。』
 聞きなれた司会の声が、会場内に響いた。八郎は、
「あの声は確かNI-IKテレビの……。」
「静かに。」
 まだそばに居たホアッスが言う。八郎と同じテーブルだったあがりに、
「会場内の雰囲気に慣れていない。サポートしてくれ。」
 ホアッスはそう言って隣のテーブルの自分の席へと座った。
『それではこの式典を始めるにあたりまして 内閣総理大臣から……。』
 八郎はあがりに、
「総理大臣やゆうて、あの人ほんまもんか?」
「そっくりさんとちゃうで。」
 その後八郎は何か言おうとしたが、会場内の拍手にかき消されてしまった。 首相の後、招待された各国の要人の挨拶、メッセージがあったが、 思いもよらぬ展開にまったく頭に入らなかった。八郎は、
「ちょっとトイレに。」
 あがりは、
「なんか顔色悪いで。一緒にいこか?」
「いや、一人で行ける。」
 八郎はそう言って会場を出た。会場を出た八郎は出口近くから見えるロビーの 大画面テレビに、先ほどまで自分が居た会場が映されていた。 が、テレビは会場中継からすぐにスタジオに切り替り、 新たな中継場所の様子を映し出した。
今度は東京駅からの中継です。ここでは列車の中で 歴史的瞬間を迎えるツアーの乗客たちがホームに並んでいます。』
 八郎は、
「あっちもこっちもえらい騒ぎや。一体何がどうなっとるんや?」
「言(ゆ)うたやろ。合併やって。みんな喜んでるみたいやで。」
 いつの間にか後ろについてきていたあがりが言った。なぜかいっしょにいたルフマモが、
「まあ、ある意味……(略)とにかく、一部を除いて、いいこと尽くめだと思うわ。」
「ある意味、というのが気になるんやけど、合併のことについて……。」
 八郎が言うとルフマモは、
「そうねー、言いたいことはいっぱい有るけど。何から?」
「うーん、とりあえず、どこどこが合併……。」
「「えええーっ!!!」」
 ルフマモとあがりは、ほぼ同時に驚きの声を上げた。
「お父さん、知らんかったん?」
「うーん、宣伝不足かしら?連日テレビや新聞、ネットでもやっていたんだけどねー。」

-どんっ-

 次の瞬間、八郎は後ろからの強い衝撃を感じ、倒れそうになった。 次の瞬間、彼の目の前にたくさんの新聞や雑誌がどさどさ落ちてきた。上からホアッスの声、
「そんなこともあろうかと、資料を持ってきた。」
「ホアッスちゃんもついてきてくれたのね。早速だから読んでみて。」
ルフマモの言われ、八郎はいくつかの雑誌や新聞を拾い上げ、見出しをいくつか読んでみた。
「併合される日本、国民はどうなる」
「大ケメゴワ連邦の一員としての日本」
「経済破綻か併合か、日本政府、究極の選択」
「連邦加入法可決」
「大ケメゴワ連邦の文化と歴史」

 八郎は、
「一体これは……。」
 ルフマモは、
「まあ、簡単に言えば私のふるさとの大ケメゴワ連邦に 日本が編入されるのよ。いわば吸収合併ね。しかも明日から。」
「そう……なんか(^_^;)」
「そうよ。明日からパスポート無しで行き来できるわよー。 必要なことはここの雑誌や新聞に書いてあると思うけど。何か聞きたいことは?」
「あ、ええっと年金とかは……。」
「ああ、あれすごく問題になってたけど、年金そのものが廃止というか、 生活保護、失業保険と頭語じゃなくて統合されて生活保証金として 連邦の給付基準で支払われるの。んで、それに加えて納付記録を 独自に調査して返還することになったのよ。」
「それと、国の借金は……。」
「まあ、最大の理由がそれよね。このままでは将来確実に起こる経済破綻を 回避するために税収をすべて借金返済にまわすことになるわ。 その代わり日本の行政サービスは連邦が直接行うことになるの。 それでも相当時間がかかるから人口を3,4倍くらいに増やして税収を増やさないとね。 そうでもしないと消費税を150パーセントぐらいにしないと無理だって 言ってた専門家が何人かいたよね。それと食料とエネルギーの自給……。」
「もうええ、頭が混乱してきた。この資料じっくり見せてもらうわ。」
「あ、それからホームページでも見れるからね。」。

3.一日目

 家運ではなく、カウントダウンパーティーが終わり、そして次の日の朝が来た。 八郎にとっては昨日までの朝はまったく変わりなく、昨日の出来事が 夢だったようにに思えた。彼の枕元には、昨日もらった大量の雑誌と新聞、 さらに後から手渡されたDVDやブルーレイディスクが散らばっていた。 そのときだった。突然しずかな部屋に機械音声が響いた。
『双六八郎さん。おはようございます。 今日は7月1日、日曜日です。』
 実はコンピュータのディスクの再生用にと、携帯ディスクプレーヤーも パーティの後に手渡されていたのである。
「そういえば、ワンセグとか、ネットワーク機能とか、タイマーがどうとかいっとったな。 自動的にスイッチが入るんか。」
 タイマーに設定されていたのだろう、プレイヤーがこれまた テレビのニュース番組を受信した。
『7時のニュースです。大ケメゴワ連邦政府は、 今日から編入された日本のエネルギー自給率を高める政策として 海上にマルチエコプラントを設置、稼動を開始しました。 現在も増設工事は続いており、順調にすすめば今年中には火力、 原子力発電をマルチエコプラントによる発電に置き換えることも可能であり、 これまでは削減どころか増加する一方で、もはや当時の関係者の リップサービスに過ぎなかったのではないかとまで言われた二酸化炭素削減目標も 前倒しで達成できるとしています。』
 プレーヤーはは水平線のはるか向こうまで無数の風車 が規則正しく並んだ海の様子を映し出した。
『マルチエコプラントは、風力発電、太陽光発電、 二酸化炭素処理プラントに加え、養殖施設、地震観測施設や、 場所によってはメタンハイドレート採掘施設も併設されています。 又、これらの施設を直線状に配置すれば長大橋の建設も可能なため、 九州、沖縄、台湾、中国ルート、九州、対馬、韓国ルート、 北海道、サハリン、ロシアルートの長大橋建設のため、 大ケメゴワ連邦政府は関係各国政府との調整に入ったものと 伝えられます。大ケメゴワ連邦政府は……。』
 あまりの信じられない展開に、八郎は固まりながらニュースを見ていた。

20002号室

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